2007年5月10日木曜日

Fw 中国地域ごとの日系企業進出動向

第3節 東アジア各地域の投資環境とビジネスモデルの特徴

 1990年代は円高による価格競争力の低下や、長引く国内の景気低迷を受けて、我が国製造業の東アジア諸国への海外展開が加速した。1997年に発生し たアジア通貨危機の影響を受け、一時は投資に陰りが見えたが、その後は順調にアジア経済も復興を遂げ、日本企業による投資活動も戻りつつある。とりわけ、 ひと際高い経済成長率を誇った中国は、2001年にWTO加盟を果たしたことにより、関税率の引き下げ、外国企業の対中直接投資に関する規制緩和が推進さ れるなど投資環境が改善され、中国向け投資が急増していった。こうした状況下で、大手企業の後を追うように中小企業の東アジア展開も大きく進み、現地にお ける製造拠点数は右肩上がりで推移している(第2-2-5図)。

 
第2-2-5図 中小製造業のアジア現地法人数
~中小製造業のアジア進出は増加傾向~

第2-2-5図 中小製造業のアジア現地法人数
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 国・地域によって多様な文化が存在し、経済発展の状況にもばらつきの大きい東アジア諸国においては、その投資環境にも違いが大きい。たとえば、中国にお いては、華北・華東・華南などの国内の地域によってもビジネスモデルに大きな差がある。第2-2-6図で地域別の進出目的を見ると、中国の中でも華東は現 地市場の開拓目的が相対的に多く、逆に委託加工貿易の盛んな華南では少ない。人件費が相対的に安い東北・華北ではコストダウン目的が多い。ASEAN4で はもっぱら取引先との関係の進出が多い様子がうかがえる。

 
第2-2-6図 東アジア進出時の目的(地域別)
~中国はコストダウン・内販、ASEANは取引先との関係での進出が多い~

第2-2-6図 東アジア進出時の目的(地域別)
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 進出先の選定に当たっては、こうした違いを事前に把握し、そこから生じうる経営リスクを事前に見積もって対応策を練る必要がある。以下では、NIES・ASEAN・中国の各地域の投資環境について簡単に整理をする。

1.NIES4(シンガポール・香港・台湾・韓国)
 NIES諸国は国内市場の狭隘さゆえに、1960~70年代にかけて相次いで輸出加工区の設置などを通じて、ASEAN4や中国より早期に輸出工業化政 策に取り組み、整備されたインフラ・質の高い労働力などを背景に裾野の広い自国産業の育成に成功してきた。その後生活水準の向上によるコストアップととも に、日本からの製造業の新規投資は頭打ちとなり、今では電子機器部品など一部の高付加価値産業や既存設備の拡張投資が中心となってきている。その一方で、 早くから日系企業が進出したNIES諸国は、前述したように様々なインフラが整備されていることから、中国では調達できない機能を提供したり、対中投資と の補完機能を担ったりなどしている。そこで、以降では対中投資との接点を踏まえながらNIES諸国の投資環境について概観する。
〔1〕シンガポール
 シンガポール政府は国策として物流拠点の整備や外資系企業の地域統括拠点の誘致に取り組んできた経緯があり、コストアップから生産拠点としての魅力は薄 れたものの、国際部品調達拠点としてのポテンシャルは依然として高い。短納期やジャストインタイムの生産体制が国境を越えてグローバルに展開される中、使 い勝手のよい24時間空港を装備するシンガポールに部品調達拠点を置く企業は多い。
〔2〕香港
 自由貿易を背景に外資の投資を呼び込んできた香港は、華南を中心とする対中投資の玄関口として大きな発展を遂げてきた。決済機能に優れ、税制面でもメ リットのある香港に現地法人を設立し、華南地区の低賃金で豊富な労働力を生かした委託加工貿易を展開している日系企業は数多い。しかし、香港もシンガポー ル同様にビジネスコストが高くつくことに加え、2001年12月に中国がWTO加盟を果たして投資環境を整備させつつあることから、最近は香港を経由せず 中国へ直接投資を行う日系企業も増えている。こうした中、香港政府と中国政府との間で経済貿易緊密化協定(CEPA)が締結され、2004年1月から施行 された。このCEPAのスキームを活用すれば、香港で製造された一定品目の製品はゼロ関税で中国へ輸出することができる。また、香港企業に対して一足早く サービス市場を開放するなど、香港の投資環境にはプラス材料となっている。
〔3〕台湾
 シンガポールや香港が東アジアや対中国において物流・調達・中継貿易の拠点や金融センターとして機能しているのに対して、台湾は人材育成やモノ作りのノ ウハウを提供する機能を果たしており、製造業を中心に早くから日本企業の投資が盛んであった。近年中国が台頭してからは台湾の産業空洞化が深刻化し、生産 拠点の中国シフトが進んだが、同時に、引き続き台湾の生産拠点を維持し、現地化を進めるとともに、日本式モノ作りを体得した台湾現地法人が対中投資におい て中心的役割を果たしているケースも少なくない。社会制度や文化が異なるとはいえ、台湾と中国の間には、言葉の障壁も少ないことから、当初から将来的に中 国へ進出することを念頭に台湾へ進出し、人材育成やモノ作りのノウハウ伝授に努めてきた日系企業も存在する。
〔4〕韓国
 一方、中小企業が大勢を占める台湾に比して、韓国は古くは財閥系の大手企業の存在が大きかった。今でこそ、ITベンチャーを数多く輩出しているが、製造 業の領域では半導体や液晶などのハイテク産業が牽引しており、最近の日本からの新規投資は、高度な部品などを提供する大手企業が中心となっている。

2.ASEAN4(タイ・インドネシア・フィリピン・マレーシア)
 NIES諸国より少し遅れて国内産業育成を進めてきたASEAN4はどのような状況であろうか。各国とも輸出加工区や工場団地を整備し、外資企業誘致に 尽力してきた。1997年のアジア通貨危機の影響を大きく受けたものの、その後は概ね堅調に経済は回復している。これらの国では、従来から外国投資受入れ 額において日本からの投資によるところが多く、電機機器関連などの産業を中心に日本との結びつきは深い。
〔1〕タイ
 特にタイは、中国の華東地域と並び、東アジアにおける日系企業の集積地となっている。また、タイの政治情勢の安定性、穏やかな国民性、幅広い基盤技術の 集積等の投資環境を評価し、電機・電子関連や自動車関連を中心に、タイをASEAN最大の生産拠点として展開する企業が増えている(事例2-2-1参 照)。近年では、AFTA (ASEAN自由貿易地域)3の関税引き下げや中国-ASEAN間のFTAの動きの中で、大手企業ではASEAN内の生産拠点の再編を進め、より投資環境の良いタイへ比重を置くような例も多いため、中小製造業にとっても進出機会が増大している。

3 域内の関税障壁、非関税障壁を引き下げることにより貿易の自由化・域内経済の活性化を促進する枠組み。


〔2〕インドネシア
 インドネシアでは、失業率が高いこともあり、安価な労働力が入手しやすく、労働コストという面で競争力がある。豊富な天然資源と人口2億人を超える ASEAN最大の市場も魅力であるが、度重なるテロ事件や行政対応などのガバナンス問題等が投資の足かせとなっている面が否めない。また、基盤技術の蓄積 もあまり進んでいない。

事例2-2-1 タイにおける自動車産業集積と日系金型企業

 自動車関連のプラスチック成形用金型の製造を手がけるクリエイティブテクノロジー(株)(本社 静岡県・従業員 145名・資本金 7,000万円)は、1997年にタイ(バンコク)に進出した。当初は金型製造が目的ではなく、CAD/CAMセンターとして、金型製造のためのデータ処 理を行うことが目的であった。国内ではその人件費コストが膨大になっていたため、それを削減したいと考えていたのである。アジアの拠点としてタイを選んだ 理由は、日本人にとって居心地がよく、宗教的、政治的にも安定していたこと、既に日系自動車メーカーがタイに進出しており、マーケットの拡大も見込まれた からである。予想通り、現在のタイは、世界的な自動車の一大生産拠点となりつつある。
 データ処理のための人材は、タイの有名な工科大学であるキングモンクット工科大学より新卒者を10名ほど集めて立ち上げた。1997年はアジア通貨危機 の時期であったが、同社は小規模であったことと、あくまで日本で受注した仕事をタイで実施するのみのビジネスモデルであったため、幸いにもほとんど影響が 無かった。
 最初の4、5年間はデータ処理のみ実施していたが、金型製造の知識がないままにデータ処理をして、実際金型を作ったときに使えないケースも発生していた ので、データ処理だけでは限界を感じ、金型工場を建設した。一方、経済環境として、タイに自動車部品メーカーが多く進出を始め、金型のニーズも出てきてお り、データ処理と金型工場をセットで保有することにメリットが見込まれた。進出時にデータ処理業務で採用した学卒者10人が、金型製造の現場においても キーマンになっている。現在は、タイに進出している日系自動車部品メーカーとの取引が多くを占め、売上の90%以上が金型製造、残り10%は当初の目的で あったデータ処理業務である。
 現地で最も腐心しているのは、日本の金型づくりのきめ細かさと技能・技術をどのようにタイ人労働者に伝承していくかということである。現地の金型メー カーとの競合は少なく、競合相手はあくまで日系又は日本国内の金型メーカーである。日系の自動車セットメーカーや一次下請も、過去に東アジア及び現地ロー カルの金型メーカーを使い出した時期があったのだが、細部のやり直しが多く発生したため、結局日本の金型メーカーから調達するケースが再び増えてきてい る。

事例2-2-2 フィリピンにおける優秀人材の確保

 アルミ冷間鍛造部品の製造・加工を主な業務としているA社(本社 山形県・従業員 300名・資本金 9,800万円)の製品は、自動車部品関連が6割以上になる。2002年に取引先の進出に呼応して、フィリピン工場を設立した。国内の需要が冷え込んだ厳 しい局面でフィリピンに進出したので、その当時から比較すれば、国内・海外ともに売上は大きく拡大している。鍛造・プレス成形加工はいわゆる装置産業であ り、製造原価に占める人件費比率は低いが、その分熟練した技術者が必要であり、特に作業工程の設計や仕上げの精密切削などは高い技術力を持った人材が求め られる業務である。
 同社は、地方の山間に立地する中小企業であるため、日本国内では有名大学を卒業した優秀な人材を確保することは難しいと感じている。一方で、失業率の高 いフィリピンでは、量的な労働力の確保はもちろん、教育環境が良く、現地の一流大学を卒業した非常に優秀な人材を容易に確保できる。これからはフィリピン を人材供給基地として捉え、優秀な人材を確保し、それらの人材を日本の工場で活用することなども考えており、日本とフィリピン間のFTA交渉の行方にも大 きな期待を寄せている。また、より優秀な人材確保と、産学連携による事業推進を行うために、フィリピンの大学に、同社を大学のラボラトリーとして開放する ことも検討している。

〔3〕フィリピン
 フィリピンは日系の電子・電機産業の進出が多い。失業率が高く、また学歴が比較的高いため、質的にも良質な労働力が確保できる上、英語も公用語となって いることから、日本人にとってもコミュニケーションが比較的取りやすい(事例2-2-2参照)。勤勉な国民性が評価され、タイ同様に日系金型産業の進出も 少なくない。
〔4〕マレーシア
 マレーシアは生活水準が高く、日本の経済発展を手本にしようという「ルック・イースト政策」で知られるマハティール元首相の強力なリーダーシップの下、 様々な産業政策を打ち出し、インフラの整備も進み、外資誘致にも積極的であった。とりわけ、技術力の高い日本の中小製造業の誘致には熱心であった。特にエ レクトロニクス関連では一定の集積が認められ、電子部品の調達環境は良い。なお、近年は慢性的な労働力不足もあり、賃金水準が上がっており、コスト競争力 は相対的に低下している。

 
3 中国
 中国は1978年から改革・開放政策に転じ、92年の小平による「南巡講話」により沿海部の大都市を中心に改革・開放政策が加速し、長期高度経済成長へ の階段を駆け上っていったという経緯がある。本格的な市場解放から十数年しか経過していないわけであるが、急速な経済成長は都市部と農村部の間に深刻な経 済格差をもたらし、その解消に向けて現在中国政府は西部大開発を推進中である。このような市場開放への足取りが、地域ごとのビジネスモデルの違いへ影響を 与えてきた。
 中国では大きく分けて、〔1〕東北・華北(北京・大連・天津など)をとりまく環渤海経済圏、〔2〕華東(上海・蘇州・杭州など)を中心とする長江デルタ 経済圏、〔3〕華南(広州・深など)を中心とする珠江デルタ経済圏、〔4〕重慶・四川省を中心とした新興の中西部経済圏に多くの産業の集積が認められる (第2-2-7図)。

 
第2-2-7図 中国地域ごとの日系企業進出動向
~上海近郊を中心に日系企業の進出が進んでいる~

第2-2-7図 中国地域ごとの日系企業進出動向

〔1〕環渤海経済圏
 東北・華北の中でも大連への日系企業の進出の歴史は古く、食品、衣料、雑貨、電子部品など幅広い業種の日系企業が集積している。天津はトヨタ自動車が進 出した影響もあり、近年はトヨタ系の自動車部品メーカーの集積が進んでいる。北京は北京大学や清華大学などの大学発ベンチャー企業が数多く立地する都市型 のハイテク産業集積の様相を呈しており、中でも中関村のIT産業の集積が広く知られている。
〔2〕長江デルタ経済圏
 華東(上海・蘇州・杭州など)は現在最も日系企業の進出が盛んな地域で、中小企業の進出も多い。ビジネスインフラが整備されているほか、華南(〔3〕) と比べると内販を目的とした電機・電子機器メーカーの進出が多いのが特徴である。また、上海周辺は金型の地場産業集積地としても知られており、その関係か ら日系企業はもちろんであるが、中国地場金型メーカーが数多く存在し、工作機械などの集積も進んでいる。
〔3〕珠江デルタ経済圏
 華南(広州・深など)は中国の経済開放の突破口となった地域であり、委託加工貿易が盛んな地域である。具体例としては第2-2-8図のように、香港に現 地法人(調達拠点)を設立して、原材料を無償・無税で持ち込み、現地の委託加工工場で加工した製品全てを輸出するモデルが挙げられる。中国の地場企業に生 産や加工を委託することで直接投資の資金負担やリスクを軽減できるため、早くから中小企業にも活用されてきた。しかし、このような来料加工貿易では純粋な 内販は認められないため、中国国内市場が成長するにつれ、中小企業の中には華南に別途独資の現地法人を設立したり、新たに華東に現地法人を設立したりする ようになっている4。広東省では、複写機などの事務機器、カメラやレンズといった光学機器産業の集積も多く、電子部品産業の生産基地にもなっている。また広州では、近年日系自動車メーカーが数多く進出している関係から、自動車部品産業の集積が急速に進んでいる点が特徴である。

4 原材料を無税で輸入できる点に着目し、外国企業が中国に設立した自社の現地法人との間で委託加工貿易を行うことが多い。現地法人は原材料等を有償輸入 し、代金を外貨で対外支払いする。加工後の製品、半製品を国外に輸出し、輸出代金を受領する。外資系企業が行う加工貿易は、この進料加工が主である。この 方式での製品が中間財である場合には、転廠取引(最終的な輸出を前提として、中国国内企業への販売を認める華南独特の制度)により、中国国内企業に販売さ れるケースも多い。


 
第2-2-8図 華南型委託加工モデル
~1980年代以降、華南地域は委託加工貿易で発展を遂げてきた~

第2-2-8図 華南型委託加工モデル

〔4〕中西部経済圏
 重慶・四川省は後発地域であるが、中国政府の外資誘致やより安い人件費を求めて日系企業の中にも生産拠点を構えるところが増えつつある。重慶は二輪車 メーカーが数多く集積している地域として知られるが、日本の大手自動車メーカーも進出している関係から近年は自動車部品関連の集積が進んでいる。

 なお、NIES→ASEAN→中国という我が国製造業の国際展開の一つのパターンにも、最近は見直しの機運が高まりつつある。依然として中国が有望な海 外進出先の一つであることは間違いないが、中国では電力不足などのエネルギー問題、一部の職種での人材不足や人件費の高騰といった問題も生じており、反日 感情の高まりなども懸念材料となって中国一極集中を是正しようとの動きも見られる。
 生産基地という意味では、中国はますます人件費が高騰する一方で、タイなどASEANは既におおむね人件費上昇は落ち着いており、単純に生産コストだけ 比較すると中国 のコスト優位性が薄れつつある。一方、市場という面で見ると、人件費が上昇し続ける中国は購買力も上昇し、ASEAN諸国と比しても大きな市場として魅力 を増している。
 そうした観点から、現在の中国進出の意図は、従来の日本向け・世界向け供給拠点から、例えば80年代の北米進出と同様に、市場に近い場所での現地生産と いう色合いが強まっており、供給拠点という見地では、タイや新興国のベトナムなどのASEAN諸国を中国一極集中のリスクを補完する生産拠点として再評価 する動きが再び高まっている(第2-2-9図5)。 ベトナムはインフラの整備や産業の集積具合などに多くの課題を残すものの、中国に比べても労働コストが格段に安いことや、ベトナム人労働者の勤勉性を高く 評価する例も多い(事例2-2-3参照)。また、中国同様に広大な市場と豊富な労働力を抱えるインドに対する期待も大きい様子がうかがえる。インドでは大 企業の進出例は徐々に増えつつあるが、インフラ整備の問題や日本からの距離的な制約等もあり、中小製造業の本格的進出はまだこれからである。今後、経済産 業省ではインド政府と協力を取りながら、ビジネスマッチングの推進などを通して、中小企業のインドへの進出支援を予定している6

5 国際協力銀行(JBIC)が1989年より毎年実施している「海外直接投資アンケート」より。同調査の調査対象は中小企業より中堅・大企業の方が多い。
6 007年2月、インドのデリーで開催が予定される世界的な先端技術展「国際技術展」に、大手企業だけでなく中小企業の積極的な参加を募り、マッチングの場を設ける計画などがある。


 
第2-2-9図 中期的(今後3年程度)有望事業展開先
~中国を筆頭に、インド・タイ・ベトナムが続く~

第2-2-9図 中期的(今後3年程度)有望事業展開先
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事例2-2-3 新たな投資先として脚光を浴びるベトナム

 自動車関連部品加工、工作機械製造を手がける(株)桜井製作所(本社 静岡県・従業員 202名・資本金 2億70万円)は、1990年代、日系メーカーがこぞってアジアに進出する姿を見て、早い段階からタイやインドネシアなどを候補にアジア展開を検討してい たが、1997年のアジア危機到来で一旦は断念した。2000年代に入ってからベトナムに着目し、主要取引先も進出していたこと、治安の良さ、何よりも比 較的優秀な労働力が安価で豊富に確保できるということに魅力を感じ、自社の判断で2002年に進出した。日系大手商社が経営に参画している工業団地に工場 を建設したため、その商社が認可から始まる雑務を手伝ってくれた。
 ベトナム工場の機能は、基本的には日本国内工場の機能と変わらない。国内本社で受注した仕事について、ベトナムで加工した方が安上がりとなる業務につい ては、ベトナムで加工するという発想であり、それに加えて、生産変動の波を吸収し、協業体制を構築する機能を有している。さらに今後はASEAN(タイ) と中国への供給基地としての機能を担っていく予定である。ハノイのベトナム工場から華南の自動車産業集積地・広州までは850kmくらいの距離しかなく、 陸送が十分に可能である。
 なお、サポーティングインダストリーの蓄積が進んでいないベトナムでは、ベアリングに使用する高品質鋼材などの原材料を現地で調達することはかなり難し い。今後さらにベトナムの二次産業が発展するためには、サポーティングインダストリーが育たないといけないが、ベトナム人の気質は非常に勤勉で、日本人の メンタリティと通じるものも多く、今後の成長が期待される。

 第3節 東アジア各地域の投資環境とビジネスモデルの特徴

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