2007年6月8日金曜日

用語集 - 経済

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■GDP(国内総生産、gross domestic product)
一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことです。国の経済の規模・成長を測る
物差しとして、1980年代頃までは国民総生産(GNP)がよく用いられていましたが、これは外国に住む
国民の生産量も含んでおり、本来の国の生産量を正確に計ることができない為、近年では外国での
生産活動分を除いた国内のみの生産を計る国内総生産を使用することが多くなりました。日本の
国内総生産は内閣府(省庁再編以前は経済企画庁)が発表しており、国内総生産には
名目国内総生産(名目GDP)と実質国内総生産(実質GDP)があります。
■BIS規制(バーゼル合意)
国際業務を行う銀行の自己資本比率に関する国際統一基準のことです。BIS規制では、
G10諸国を対象に、自己資本比率の算出方法(融資などの信用リスクのみを対象とする)や、最低基準
(8%以上)などが定められました。自己資本比率8%を達成できない銀行は、国際業務から事実上の
撤退を余儀なくされます。
■ペイオフ
金融機関が破綻した場合に、預金口座について、ある一定の金額までしか払い戻しを保証されないこ
とです。普通預金など決済口座の場合、預金保険機構によって全額が保護されていましたが、2005年4
月1日以降は、1金融機関につき1人当たり元金1000万円までと、その利息しか保護されなくなりました。
■景気対策
社会の経済状況を望ましい状態に調節する方法のことです。景気対策として、政府の行う「財政政策」
と、日本銀行の行う「金融政策」とがあります。日本はモノやサービスの価格などを国家が統制するの
ではなく、市場経済のシステムをとっているので、景気を安定させる政策といえども個々の自由な取引
を損なわない範囲でしか行えません。
※財政政策:財政とは、国が行う経済活動のことであります。財政政策は、景気対策などの政策をいい
ます。
■公的資金
政府財政資金の総称です。
公的資金は、政府の政策の一つとして、様々な場面で状況に応じて投入され、最終的に、国民負担で
ある税金を利用する可能性があるものされています。
公的資金が投入された例として、「金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律(金融機能安定
化法)」及び「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律(金融機能早期健全化法)」に基
づき、1998年に金融システムの安定化をはかる観点から、金融機関に対しておこなわれました。
経済
経済

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■インフレ(インフレーション、inflation)
英語で「膨張」の意味で、経済全体で見た需要と供給のバランスが崩れた場合、すなわち総需要が
総供給を上回った場合に発生する現象のことです。物価の上昇は貨幣の価値の低下を同時に
意味し、基本的には好況の場合に発生します。不況下で物価が上昇を続ける場合は
スタグフレーションと呼ばれます。
■デフレ(デフレーション、deflation)
物価が持続的に下落していく経済現象のことです。物価の下落は同時に貨幣価値の上昇も意味し、
同じお金で多くのものを買えるようになります。経済全体で見た需要と供給のバランスが崩れること、
すなわち総需要が総供給を下回ることが主たる原因で、貨幣的要因によってもデフレは
引き起こされます。このような悪循環がとどまることなく進むことを「デフレ・スパイラル」と呼び、
物価上昇率(インフレ率)が低下すること、すなわち物価は上昇しているが大きく上昇しなくなることは
ディスインフレーション(disinflation)、略してディスインフレと呼ばれ、デフレではありません。
すなわちデフレーションは物価上昇率(インフレ率)がマイナスになることです。
■為替(かわせ)
手形や小切手、郵便為替、銀行振込などによって金銭を決済する方法のことです。遠隔地への
送金手段として、現金を直接送付する場合のリスクを避けるために用いられ、特に輸出入をする際に
用いられています。主に次の2種類に分けられます。
・内国為替
金融機関が、国内の遠隔地で行われる債権・債務の決済を、現金の移送を行わずに決済する
方法。
・外国為替
通貨を異にする国際間の貸借関係を、現金を直接輸送することなく、為替手形や
送金小切手などの信用手段によって決済する方法。
■ベア(base+up)
和製語でベースアップの略です。給与の基本給部分(ベース)に対しての昇給のことで、労働組合と
企業との間での賃上げ交渉においては、ベアの有無および度合いが交渉のポイントとなることが
多いです。
■労働組合(労組)
労働者が労働条件の維持・改善や社会的地位の向上などを目指して、自主的に組織する団体の
ことです。企業別・職業別・産業別・一般組合などの形態があり、日本の労働組合法では、第2条で
「……労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを
主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう」と定義されています。
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■貸渋り・貸しはがし
金融機関が企業への新たな融資を断ったり、融資を引きあげたりすることをいいます。経営の
健全性を保つため、貸し出し資産を圧縮していることが背景です。2002年7~9月期国内銀行の
中小企業向け貸出残高は199兆円で、1997年同期から55兆円(21.6%)減っています。
■瑕疵担保
買ったものに、買い主が予想もできないような隠れた瑕疵(欠陥)があった場合、買い主が、売り主に
契約解除や損害賠償を請求することを認めている、民法570条の売買に関する規定のことです。
98年に経営破たんして一時国有化された日本長期信用銀行(現在の新生銀行)を、国が米投資会社
リップルウッド・ホールディングスを中心とする投資組合に売却した際の契約では、旧長銀の貸し出し
債権の価値が3年以内に2割以上下がった場合、国に債権の買い戻しを請求する権利を認めた
「瑕疵担保条項」が盛り込まれた。国が買い戻した後に債権を回収できなければ、公的資金で損失を
穴埋めすることになります。同様の条項は、やはり一時国有化された日本債券信用銀行
(現在のあおぞら銀行)の売却契約にもあります。
■完全失業率
働く意思がある人全体に対する職がない人の割合のことです。調査期間となる毎月末の1週間に
求職活動をしたが、仕事が全くない人(完全失業者)の数が分子で、15歳以上の就職者と
完全失業者の合計数(労働力人口)が分母となります。求職活動をしない主婦などは完全失業者に
含まれません。
■共済年金
公的年金制度には、自営業者らの国民年金、民間サラリーマンの厚生年金のほかに、
国家公務員共済組合、地方公務員等共済組合、私立学校教職員共済の3種類の共済年金が
あります。
■金融経済
お金を銀行に預けたり、株式などを売買したりすることなど、モノを介せずにお金だけが動く経済活動
のことをいいます。
全ての経済活動をみた場合、規模は、「金融経済」のほうが「実物経済」よりも大きくなります。
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■繰上げ返済
ローン返済において定例の返済のほかに、臨時で一部元金返済を行うことをいいます。
住宅金融公庫では100万円以上から繰り上げ返済可能であるが、民間銀行の住宅ローンは
一般的に住宅金融公庫より小口でも可能です。ただし、民間銀行の住宅ローンの場合は繰り上げ
返済手数料が必要となります。繰り上げ返済を行うと元金残額が減少しますので以後の返済内容が
変更になりますが、繰り上げ返済分の返済期間を短縮する方法と、返済期間を変えず繰り上げ
返済分の元本返済を減らし返済額を変更(減額)する方法があります。民間金融機関の
住宅ローンの場合、選択している金利方式(固定、変動など)によって繰り上げ返済後の返済方法が
原則決められている場合があるなどは注意が必要になります。
■国民経済計算
国の経済の状況を、生産、消費、投資から資産、負債まで体系的に記録する国際的な基準のことで、
「SNA」ともいわれます。国内総生産(GDP)を計算する基礎資料にもなります。現在の基準は
1993年に国連が導入を勧告し、日本は2000年から採用しました。
■自己破産
破産法に基づく債務整理の1つです。債務者本人が裁判所に、破産申し立てを行います。
破産宣告を受けると、財産があれば管財人が選ばれ、処分されるほか、就くことのできる職業が
限定されたり、裁判所の許可なく移転できないなどの制限を受けます。その後、裁判所から債務の
免責が認められると、それ以上の支払い義務や、職業などの制限はなくなります。
■借地権
建物所有を目的として土地に地上権を設定し、または土地を賃借する権利をいい、物件である
地上権と債権である土地賃借権があります。
■収入合算
借入者の収入だけでは収入条件を満たさなかったり借り入れ希望額に対する返済力(年収に対する
返済額の割合)が規定を超過してしまうような場合に、民間金融機関の住宅ローンでは配偶者
および親・子などのうち1名の収入の1/2を借入者の収入と合算して計算できる制度のことです。
住宅金融公庫の場合は返済基準となる必要月収の2倍まで合算することができるがそのかわりに
収入合算者は連帯債務者となります。借入額の希望を満たすための有力な方法ですが、
借入者以外の収入に返済を依存することになるので、合算者の収入の維持可能性など慎重に
勘案して利用する必要があります。
■消費財
家計で購入される製品で、エアコン、乗用車などの『耐久消費財』と衣類、靴、食料品などの
『非耐久消費財』を合計したもののことです。
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■消費者物価指数
総務省が毎月1回発表している消費者物価の動きを示す指数のことです。家計の支出のうち、
購買頻度が高く、重要度が大きいとみなされる商品やサービスを選んで価格変動を集計しています。
日本銀行が発表する企業物価指数(旧卸売物価指数)と共に、代表的な物価指標となっています。
■生命保険料
契約者が支払う生命保険料は、死亡保険金などの加入者の相互扶助的な支払いに充てられる部分、
満期保険金など主に加入者への保険金支払いに充てられる部分、生命保険会社の事業経費に
充てられる部分の3つに分かれます。上記の2番目の部分が責任準備金として積み立てられ、
運用されるが、最近は超低金利や株価の下落で運用実績が予定利率を下回る逆ざや状態に
陥っており、これが生保の経営悪化の大きな要因となっています。
■世界銀行(国際復興開発銀行)
1945年12月に設立された国際金融機関で、第2次世界大戦後の復興支援が当初の役割でしたが、
最近は貧困の撲滅など、開発途上国への資金支援が中心的な活動となっています。
国際金融市場で、ドル、ユーロや円建てで債券(世銀債)を発行して資金を調達し、ダムや
鉄道建設といった途上国の社会基盤(インフラ)整備や環境保護事業などに活用します。年間の
債券発行額は、150~200億ドルに上る。これまでに約40種の通貨で起債した実績があり、平均的な
満期は5~7年です。日本は1952年に加盟し、戦後復興に努めた時代に、東海道新幹線や
名神高速道路の建設など大型開発事業で支援を受けました。国際金融公社(IFC)は姉妹機関で、
途上国の民間企業への融資などを手掛けています。
■石油輸出国機構(OPEC、オペック)
欧米の国際石油資本に対抗する産油国の組織として1960年にバグダッドで設立されました。現在は
11カ国で構成、総会で世界の需要に合わせた原油の生産量、原油価格を調整します。ロシアなど
非OPEC諸国の台頭で、2001年の世界シェアは約38%にとどまり、価格への影響力は低下傾向に
あります。
■設備投資
企業が生産やサービス提供の能力を高めるため、工場を建設したり新しい機械を導入したりする
ことをいいます。主に、企業の収益の好不調を反映。国内総生産(GDP)の10%以上を占め、
国内景気動向に大きな影響を与えます。
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■登録免許税
国による登記、登録、免許などを受ける時にかかる国税のことです。土地、建物など不動産登記に
対する課税と、会社の設立登記など商業登記に対する課税が中心になっています。税率は登記の
種類ごとに定められており、不動産の所有権移転登記では、売買による場合は不動産価額の1000
分の50、相続の場合は1000分の6などとなっています。2001年度の税収は7957億円で、うち土地に
関する税収が5847億円でした。ただ、登録免許税や不動産取得税など土地流通課税については、
土地の取引を妨げ、資産デフレを招いているとの批判が出ています。このため、政府・与党は
2003年度税制改正で、登録免許税、不動産取得税の減税を図る方針です。
■トップダウン
まず景気動向や経済状況などマクロ経済について分析し、投資対象とする国・資産・業種などの
配分を決定してから最終的に個別の銘柄選択に入る運用スタイルのことをいいます。
■トップ・ダウン・アプローチ
経済成長率や金利動向などを参考にファンドに組み入れる資産の地域・有価証券の種類・
業種などをあらかじめ決める運用手法のことです。
■日銀法
日本の中央銀行である日本銀行の設立目的や業務の内容を定めた法律のことです。抜本的な
改正を経て1998年4月に施行された現在の新日銀法は、旧法に比べ日銀の独立性、透明性が
大幅に高められているのが特徴です。
■ベンチャー
新たに企業を設立することの他、既存の企業が社内に事業部門を立ち上げることも社内
ベンチャーと呼んだりする場合もあります。これは冒険を意味する言葉が転じて、収益が未確定の
事業全般についてもベンチャーと呼ぶようになりました。既存の秩序や慣行にとらわれずに
どんどん新しいことに挑戦するという特性を持つことから、新時代を切り開く旗手として世間の期待は
高まっています。
■ボトムアップ・アプローチ
個別企業の調査・分析から投資対象となる銘柄を選別し、ポートフォリオを構築する方法のことを
いいます。
経済

P.80

■無担保融資
金融機関が、貸出先から土地などの担保をとらずに行う融資のことです。従来は、一部の優良な
大企業向けが中心で、中堅・中小企業に対しては貸し倒れの危険性を最小限に抑えるため、担保を
とるのが一般的でした。
■メガバンク
巨大な資産や収益規模を持つ銀行(グループ)を言います。2001年4月、さくらと住友が合併し
三井住友銀行(2000年3月期の資産規模97兆円)、東京三菱、三菱信託、日本信託が経営統合した
三菱東京フィナンシャル・グループ(同85兆円)、三和、東海、東洋信託の3行によるUFJグループ
(同82兆円)が相次いで発足しました。これで第一勧業、富士、日本興業が2000年9月29日に
設立したみずほフィナンシャルグループ(同約134兆円)と合わせ、4大銀行グループが形成され
ました。金融界の世界的な競争での勝ち残りを目指した再編戦略で、いずれも規模は世界の10傑に
入ります。ただ、米シティグループ、JPモルガン・チェースなどに比べ収益性で劣り、効率性の向上が
課題です。
■ロイター通信
設立150年を超えるロイター通信社は、世界最大の国際通信社として、世界130カ国197支局に
およそ2,400人の記者・カメラマンを有している会社です。
■景況感格差
数の国や地域などの景気動向を比較して、目的の景気状況を測る際に用いる考え方です。
投資している地域や企業に影響を与えると思われる、他の景気動向との比較=景気動向指数により
説明されます。
■金融相場
景気後退が続いているにもかかわらず、金利低下で株式の投資対象としての魅力が上がったことに
好感して株価が上昇する局面を指します。
経済

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■金融政策
金融政策とは、通貨供給量や貸出金利をコントロールすることによって、物価上昇率や経済成長率
の安定を目的に行われる政策です。金利政策がキチンと行われないとインフレやデフレを引き起こし
ます。また、金利政策を行う手段としては3つあります。
① 金利政策(公定歩合政策)
金利政策とは、日本銀行が公定歩合を上げ・下げすることで行う金融政策です。公定歩合を
変えることで市中金利を変動させようとする方法で、企業の投資活動に影響を与えることを
目的としています。景気が過熱した場合には、公定歩合を高く設定して金融を引き締めます。
逆に、不景気の場合には、公定歩合を低く設定して金融緩和をはかります。
② 公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)
公開市場操作とは、日本銀行が金融市場で民間金融機関に国債や手形を売買することで、
市場に資金を供給(または吸収)し、マネーサプライ(通貨供給量)の調節を行うことをいいます。
また、公開市場操作には、2種類の手法があります。
・売りオペレーション(売りオペ)
売りオペレーションとは、日本銀行が国債や手形などを民間金融機関に売却して、市場の
余剰資金を吸収することをいいます。マネーサプライ(通貨供給量)が減れば、金利は
上がります。好景気で、市場に流通するお金が余っていてインフレ気味の時は、
売りオペレーションで市場のお金を吸収します。売りオペレーションは、金融引き締め政策と
なります。
・買いオペレーション(買いオペ)
買いオペレーションとは、日本銀行が国債や手形などを民間金融機関から購入して、市場に
資金を供給することをいいます。マネーサプライ(通貨供給量)が増えれば、金利は下がります。
不景気で、市場に流通するお金が足りなくてデフレ気味の時は、買いオペレーションで市場に
お金を供給します。買いオペレーションは、金融緩和政策となります。
③ 支払準備率操作(預金準備率操作)
支払準備率操作とは、日本銀行が支払準備率を上げ下げすることで、民間銀行が貸出しに
回せるお金の量を調節することをいいます。他に預金準備率操作、法定準備率操作、
準備率操作という言い方があり、全て金融機関の貸し出し能力に働きかける方法です。
日本銀行は、支払準備率を操作することで、マネーサプライを調節することができます。
支払準備率を上げると、民間銀行が貸出しや証券投資に回せるお金の量が減少し、
支払準備率を下げると、民間銀行が貸出しや証券投資に回せるお金の量が増加します。
経済
好景気公定歩合を上げる金融引き締め
不景気公定歩合を下げる金融緩和
好景気売りオペレーション金融引き締め
不景気買いオペレーション金融緩和
好景気支払準備率を上げる金融引き締め
不景気支払準備率を下げる金融緩和
金融政策
公開市場操作
支払準備率操作
(預金準備率操作)
金利政策
(公定歩合政策)

P.82

■金利政策続き
また、金利政策の効果として2つの効果があります。
① コスト効果
コスト効果とは、貸出金利というコスト(費用)が変わることによる直接的な効果です。以前は、
公定歩合は規制金利の代表として、銀行金利や為替レートに影響を与えてきましたが、1994年
以降は金融の自由化が進められ、自由金利を中心に金利が決定されるようになり、公定歩合と
市場金利が連動しなくなりはじめました。公定歩合の上げ下げが銀行の預金金利に直接影響を
与えることはなくなり、コスト効果の影響は減少しました。
② アナウンスメント効果
アナウンスメント効果とは、公定歩合の変更を宣言することによる効果です。公定歩合を
上げるという日本銀行の姿勢(スタンス)が分かると、企業はお金を借りるのを控えるように
なります。この間接的な波及効果を、アナウンスメント効果と呼んでいます。公定歩合の変更の
宣言には、日本銀行の景気の現状や先行きに対する判断を示すという心理的な意味も含まれて
います。
経済
■公定歩合
公定歩合とは、日本銀行が民間銀行に貸出しを行う時の基準金利のことです。
・銀行金利への影響
公定歩合の上げ下げは、銀行の金利に影響を与えます。公定歩合が上がると、銀行の
借入コストが高くなるため、銀行がお金を貸し出す時の貸出金利は上がります。逆に、
公定歩合が下がると銀行の貸出金利は低くなります。
・為替レートへの影響
公定歩合の上げ下げは、為替レートにも影響を与えます。公定歩合が上がると民間銀行の
預金金利が上がり、海外の投資家は円で預金しようとします。そのためドルを売って円を買う人が
増え、その結果、為替レートは、円高/ドル安に誘導されます。逆に、公定歩合が下がると
民間銀行の預金金利が下がり、国内の投資家は金利の高いドル通貨で預金しようとします。
そのため円を売ってドルを買う人が増え、その結果、為替レートは円安/ドル高に誘導されます。
コスト効果貸出金利が変わることによる直接的な効果
アナウンスメント効果公定歩合の変更を宣言することによる間接的な効果

P.83

経済
■マネーサプライ
マネーサプライとは、日本銀行を含む金融機関全体から経済全体に対して供給される通貨の量が
どのくらいなのかを見るための指標です。基本的には「一般法人、個人及び地方公共団体」
(通貨保有主体)が保有する通貨量の残高であり、国や金融機関が保有する預金等は対象には
なっていません。ただし、信託、保険会社等は除かれる一方で、証券会社、証券金融会社、
短資会社などは一般法人として通貨保有主体に含まれます。この指標は毎月、日本銀行が調査を
して発表をしています。また、マネーサプライは3種類あります。
① M1(エムワン)
現金通貨と預金通貨を合計したものです。狭義の意味での通貨量を表しています。また、
現金通貨とは、日本銀行が発行する紙幣や政府が発行する硬貨のことで、預金通貨とは、
預金者の要求でいつでも引き出すことができる流動性の高い預金です。これを、要求払預金と
いい、当座預金・普通預金・貯蓄預金等があります。
② M2(エムツー)
M2に準通貨を含めたものです。準通貨とは、解約することでいつでも現金通貨や預金通貨となり、
決済手段として機能する金融資産のことで、大半は定期預金です。
③ M3(エムスリー)
M2に郵便局・信用組合・農協などの預貯金や金銭信託を含めたものです。
一般的に、マネーサプライ統計では、M2+CD(譲渡性預金)が重視されています。CDとは第三者に
譲渡できる定期預金で、自由に発行条件を定めることができる預金証書のことです。CDを発行
できるのは銀行など預金を受け入れる金融機関に限られています。CDの預金者は、金融機関
およびその関連会社、証券会社などが中心です。期間が1~3ヶ月のものが最も多く発行されており、
取引単位は、5,000万円以上、1,000万円単位です。このCD(譲渡性預金)とM2の合計の数字は
実体経済や物価との間における関係が相対的に安定的であるとされ、注目度が高いのです。
最近では、M3+CDに代替性の高い金融資産を加えた広義流動性という指標も利用されるように
なってきています。この金融資産には投資信託、国債、外債、FB(政府短期証券)、金融債、
CP(コマーシャルペーパー)等が含まれています。
また、マネーサプライと景気の関係は、景気が良い時は企業が設備投資を増やし、銀行からお金を
借り入れます。それにより銀行から世の中にお金が流れ、マネーサプライが上昇します。ただ、
あまりお金の量が増えすぎるとインフレを引起こし物価が高くなる可能性があります。不況の時は
その逆になります。日本銀行はマネーサプライを適正水準に保つため、景気の舵取りを経済活動に
応じてマネーサプライを調整します。
M1 現金通貨預金通貨
M2 現金通貨預金通貨準通貨
M3 現金通貨預金通貨準通貨郵便局・農協・信用組合などの預貯金、金銭信託

P.84

■長・短期プライムレート
プライムレートとは、銀行が取引先の中でもっとも優遇する企業(業績が良い、財務状況が良いなど、
貸し出す上で問題がない企業)に対して、資金を貸し出す際の金利のことで、短期プライムレートと
長期プライムレートの2種類あります。
① 短期プライムレート
短期貸し出し金利の基準となる金利のことです。各金融機関は返済期間が1年以内の資金の
やり取りをする短期金融市場の動向を見ながら決めていますが、実際には無担保コール翌日物
と呼ばれる金利水準に準じて決まっているようです。
② 長期プライムレート
長期貸し出し金利の基準となる金利のことです。一般の長期貸出金利については、
この長期プライムレートを基準にして、リスク度合いなどに応じて金利を上乗せして決められて
います。また、長期プライムレートは、長期国債の利回りの変動にほぼ連動するような形で
その都度決定されていきますが、現在銀行が長期で貸し出す金利は、短期プライムレートに
連動する長期変動基準金利(新長期プライムレート)を導入するところが増えています。
経済

P.85

■為替レート
為替レートとは、異なる通貨を交換する時の比率のことで、為替相場ともいいます。基本的に
外国為替市場では、実際上の基軸通貨であるドルを中心に物を見る傾向があります。また、
為替相場の決定には、明確な答えがあるわけではなく、色々な要素によって複合的に決まるります。
最終的には需要と供給で決まることは、モノの値段と同じですが、オークションのように、その時の
人気やムードで実際の需給以上に相場が上下することもあります。
■円高・円安
円高・円安とは、円と外国の通貨の価値に対してのことです。外国の通貨には、米ドル、ユーロ、
英ポンド等、世界には、国(地域)の数だけいろいろな種類の通貨がありますが、例えば、
1ドル=150円と1ドル=100円では、円高とは1ドル=100円のことを円高といいます。これは、ドルを
買おうとした場合、同じ1ドルを得るために100円を出せばいいのと、150円を出さなければいけない
状況を比べると、明らかに100円の方が得です。これは円の価値が高いから得になるというわけで、
1ドル=150円に比べ円高と言えます。逆に1ドル=150円の時は円の価値が低く、1ドル=100円に
比べ円安と言えます。ですから、「円高」あるいは「円安」という表現は、あくまで相対的な円の価値を
表すもので、先程と同じ1ドル=100円でも、1ドル=90円が1ドル=100円になったのであれば円安と
いいます。そして、この円の価値を数字で表記したものが為替レートです。
・輸入業者、消費者の場合
輸入業者や消費者の場合、例えば、20ドルの輸入Tシャツを買おうとすると・・・
1ドルが150円の時であれば、20ドル×150円=3,000円
1ドルが100円の時であれば、20ドル×100円=2,000円
1ドル=150円から100円の円高になると同じモノを1,000円も安く購入できます。(円高が
販売価格に反映されている場合)円安になると輸入品は逆に高くなります。
・輸出業者の場合
輸出業者の場合、例えば、国内のA自動車が米国で1万ドルの価格で車を販売しており、
1台売れたため現地のアメリカ人から1万ドルを受け取るとすると・・・
1万ドル×150円=150万円の売上
1万ドル×100円=100万円の売上
円安の時と円高の時を比較すると、50万円も差がでます。日本の代表的な自動車メーカーでは、
1円の円高で約100億円も収益に影響を与えると言われています。そのため、原材料を輸入に
頼る日本企業では、円安になると輸入価格が高くなり収益を圧迫し、円高になると安く輸入が
できるので、収益に貢献します。
経済

P.86

■物価指数
物価指数とは、物価水準の変動を示す総合的な指数のことで、基準年次の物価を100とし、以後の
各年次の物価をそれに対する数値で表します。物価指数には、消費者物価指数と企業物価指数
(卸売物価指数は2003年1月から「企業物価指数(CGPI)」に変わりました)等があり、企業物価指数

910品目を、消費者物価指数は580品目を対象にしています。
・消費者物価指数(CPI)
消費財の価格の変動を示す指数のことで、基準時に対する価格の比率を各品目ごとに求め、
消費支出額から作ったウエートをかけ加重平均した数値です。
・企業物価指数(CGPI・国内企業物価指数)
企業間の流通段階における商品の価格から算定した物価指数です。日本では日銀が作成して
いるものが代表的で、景気変動を最も敏感に反映するといわれ、景気の指標とされています。
■日銀短観
日銀短観とは、日本銀行が景気の現状と先行きについて企業に直接アンケート調査をするもので、
「企業短期経済観測調査」のことです。海外でも「TANKAN」の名称で広く知られています。
日銀短観は、毎年3・6・9・12月に調査を実施し、翌月の4・7・10月の初旬と12月の中旬に
公表されます。なお、3・6・9・12月の下旬に先行き6ヶ月分の公表日を事前公表しています。短観は
調査の翌月に公表という速報性があり、サンプル数が多く、回収率が高いことが特徴です。また、
その調査範囲も広く、他の経済統計と組み合わせてその動向や予測の分析に利用することが
可能です。そして、最も市場で注目されるのは「主要企業・製造業の業況判断DI」ですが、このDIの
数値は客観的な定量数値に基づく実勢の数字などではなく、あくまでも各企業の主観的要素による
数字です。そのためアンケート回答者の実感が数字に表れたり、その時の心理も数字を左右する
ため注意が必要です。
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